一般企業 人事制度改定 中堅企業の事例 会社概要 業種店舗系販売業 従業員数400名 売上150億円 制度改定の背景 現行人事制度が制定されてから20年が経過し、各所に不具合が生じていました。これまで、微調整で何とか制度を維持してきましたが、微調整で矛盾点を解消できないレベルに達していました。 今回賃金制度を抜本的に改定することで、社員のモチベーションを高めることを狙いとしました。 また、初任給の見直しや基本給の見直しなど、時代背景に合わせて制度を全面改定することにより、今後10年間は微調整で運用できる仕組みを作ることを目標としました。 新制度の改定ポイント 新制度における主要な改定ポイントは以下のとおりです。 1. 等級と呼称、役割の関係などに不明瞭なところがあったため、等級フレームを作成して、人事制度の全体設計を明確にした。 2. 新卒者の初任給が、相場と比べ低い状況であったため、相場並みへの引き上げを図った。 3. 基本給の体系が複雑で細分化されていたので、一本化を図りわかりやすい基本給とした。 4. それに伴い、「ゾーン型賃金表」形式で基本給表を新設した。 5. 管理職になった場合、時間外手当も考慮すると一般社員との逆転現象も発生していたため、等級手当、役割手当の整備により賃金バランスを是正した。 6. モデル賃金の作成により、賃金カーブの引き直しを行い、役職定年者の基本給引き下げは行わず、昇給を停止することに変更した。 7. 諸手当の中に整合性の取れていない部分も見られたので、総合的に見直しを図った。 8. 年功型で基本給連動型の退職金を、貢献度反映型のポイント制退職金に変更した。 等級制度 社内の等級を6つで設定し、各等級の役割や定義を文章化し、求められている内容が社員に伝わるようにまとめました。 また店舗系と本部系に存在する役職と等級の関係を整理して、役職の序列、呼称を明確にしました。等級ごとの年数イメージを標準モデルと最短モデルで表記し、昇格スピードが社員に伝わるように設定しました。 賃金体系 年齢給、資格給、本人給と3種類で構成されていた基本給を1本化して、年功職の強かった基本給の体系を実力主義化しました。 また、管理職に対する時間外見合いの等級手当を新設、役付手当も手厚く改定し、一般職と管理職の逆転現象を解消しました。具体的には、役付手当として部長60,000円、次長40,000円など他の役職を含めて手当金額を設定しました。 また等級手当として6等級70,000円、5等級60,000円など各等級に金額を設定しました。部長6等級の社員は役付手当と等級手当の合計金額130,000円が支給され、役職と等級に任される役割に応じた賃金体系になるように制度設計しました。 賃金表 世間相場との比較を行い、初任給の見直しを行いました。 また、順調に昇格・昇進していく社員に対して、会社がどのような処遇をするつもりでいるかを示すモデル賃金を明確にして、組合にも提示しました。 モデル賃金は22才から60才の年齢を縦に記載し、各年齢の右側に年齢に対応した勤続年数、等級、役職、基本給、役付手当、等級手当、家族手当、住宅手当を表示して年齢ごとの所定内賃金が分かるようにまとめました。これにより自社の賃金水準が明確になりました。 賃金表はゾーン型賃金表を採用しました。ゾーン型賃金表は範囲職務給と言われており、等級ごとの基本給の上限金額と下限金額を定めたもので、等級に求める役割と賃金を連動させることができる賃金表です。モデル賃金で設定した賃金水準をもとにゾーン型賃金表の金額を設定し、役割に応じた納得性のある賃金表を作成ました。 人事評価表 人事評価制度は、目標管理を中心とした評価システムが導入されており、今回は改定対象としませんでした。 新人事制度導入の効果 新制度は導入されたばかりですが、これまで組合を通して社員の不満として出されていた全要望事項に対して処遇改善の方向で制度改定を行いました。 組合も改定案には全面賛成で了解しました。 新制度への移行に際しては、会社としても3,000万円以上の原資を捻出しましたので、多くの社員の給与がアップされました。 基本給の年功化と偏ったインセンティブ制度の是正がなされたことにより、管理職のモチベーションが上がり、チーム、組織で仕事をするという組織風土に変わってきたとのことです。 人事制度改定 小規模企業の事例